全ゲノム検査(ミトコンドリア病)体験談(2)

— 実証事業に参加して下さった方:30代男性当事者様のお母様(写真はイメージです)
2023年2月7日公開 


ジーネックスは「ジーネックスの全ゲノム検査」の提供に先立って、全ゲノム検査の開発と事業としての実証を2022年1月から約1年をかけて、希少疾患のひとつであるミトコンドリア病(指定難病21)を対象とした共同研究(2022年1月28日 プレスリリース)と実証事業を通じて行ってまいりました。


ここでは実証事業に参加してくださったミトコンドリア病の当事者の方へのインタビューを通じた体験談をご紹介します。


― 実証事業を受けて下さった背景


ミトコンドリア病の確定診断は受けているが、遺伝子検査を受けたのは随分以前のことで、当時は明確な結果を得るには至らなかったとのことです。遺伝子検査も当時と比べて格段に進んでいるだろうし、唾液を採取するだけの簡単な検査であれば、と実証事業への参加を快諾いただきました。以前の検査では生検採取など、検査の負担は小さなものではなかったそうです。


ジーネックス注:現在は当時と比べて遺伝子検査の精度自体も向上していますし、当時お受けになった検査はミトコンドリア病の原因遺伝子があると報告されている幾つかの遺伝子に絞った検査(パネル検査といいます)であったと想像されます。


― 全ゲノム検査を通じて分かったこと


当事者様の全ゲノム解析結果を「ジーネックスの全ゲノム検査」で参照している公的なデータベースに照らし合わせた結果、若干数「病的」が疑われる変異が検出されましたが、明確にミトコンドリア病の原因と報告されている変異が検出されることはありませんでした。

「病的」が疑われる変異もより詳しく調べて注釈がつけられた結果、変異のひとつは日本人であれば全体の数%が持つさほど珍しくないものだと分かりました(報告数が多い場合、その性質・症状がより多く発生しているはずだが、そこまでの報告数がないため、性質が生じないと解釈されるケースが多数)。また別の変異は母方・父方の両方から引き継ぐと病気が発症する潜性遺伝性の病気と関連するとされていましたが、検査結果からは母方・父方の片方からしか引き継いでいないと推定されました(その場合、病気の性質はあらわれにくいとされる)。

このような検出結果の中、ミトコンドリア病の病状管理に影響し得る、循環器系関連の疾患との関連が報告される変異に注目が集まりました。


― レポートを受け取ってどんな行動を取られましたか?


レポートの内容を主治医の先生にお話になったそうです。定期健診の中での報告であったそうですが、循環器系の変異の話を受けて、念の為、循環器系の検査を勧められ、実際に受けられたそうです。その結果は問題ないだろうとのことで、ほっとされたそうです。結果の説明を受けたときには、特に循環器系の変異に関しては、遺伝子に関わるものなので、念の為、お母様ご自身とお父様も全ゲノム検査を受けることを考えられたそうですが、今回の循環器系の検査結果を踏まえ、総合的に勘案した結果、今回はご両親の全ゲノム検査は受けずにおこうと判断されたそうです。


ジーネックス注:このインタビューの翌日に主治医の定期的な受診があるそうで、そこには検査レポートを印刷してお持ちになるそうです。


― レポートの内容はどうでしたか?


今回は実証事業ということで、専門医による遺伝カウンセリングを先に行って検査結果を説明し、その後に書面のレポートで検査結果をお伝えしました。説明は最初に聞いた時には難しく、あとからご自身でもレポートやメモを見返されて、それで理解できたことも多かったそうです。ゲノム、遺伝、バリアント※などの言葉、意味が難しく、ご自身でもいろいろと調べられたそうです。深いところでの理解がとても難しかったそうですが、(治療等、全般においても)例え医師が説明しても決めるのは患者自身であるべきなので、当事者(患者)としてもある程度分かるようにならないといけないと感じられたそうです。近々、遺伝に関する勉強会にも参加されるとおっしゃっていました。


※「バリアント(variant)」:ゲノムの塩基配列には個人ごとに様々な「違い」があることが知られており、ゲノム配列中で参照配列と異なる箇所を「バリアント」と呼びます。「バリアント」は中立的な用語として導入された一方で、本ウェブサイトや「ジーネックスの全ゲノム検査」のレポート中で用いる「変異(mutation)」には「悪い影響を及ぼす」といった含意があります。両語は厳密には使い分けるものですが、本ウェブサイトとレポートでは分かりやすさのために「変異」と表現しています。


― 全ゲノム検査を他の方に勧めたいと思われますか?


全ゲノム検査を受けるのはこれまで費用面であったり、患者自身の意思で必ずしも受けられるものではなかったりと、ハードルが高かったことは認識しており、本当に必要とされている方には勧められるのでは、とのことでした。ただ当事者の方の中にはご自分でしっかり調べる方もいる一方で、そうではない方、ご高齢の方もいらっしゃるので、まだ誰にでも簡単には勧められるものではないとのことでした。ご子息に循環器系の疾患に関連する変異が検出されたことは思いもよらなかったことで心が揺さぶられた経緯もあり、結果を誰もが受け止められるかが心配とのことで、どう同じ当事者の方に伝えるか悩んでいらっしゃるとのことでした。


ジーネックス注:現在提供している「ジーネックスの全ゲノム検査」では、検査後、ご希望の方には有償で遺伝カウンセラーを紹介する体制を整えています。あるいは結果レポートには遺伝を専門とする方が見て参考になるようなデータを掲載しておりますので、主治医や医療拠点病院などにお持ちいただくことも想定しております。レポートの記載内容や本ウェブサイト等での情報提供を通じて、内容を分かりやすく、かつ事前にできるだけのご説明を行うよう心掛けていますが、その後の医療への橋渡しもサポートできるよう努めてまいります。


最後に


ジーネックスが提供している「ミトコンドリア病 治験レポート」を購読いただいていて、これはとても参考になっている、素晴らしいとお褒めの言葉をいただきました。こちらは当事者のお知り合いの方、みなさんにご紹介いただいているそうです。ミトコンドリア病 治験レポートはこちら

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